『ファイナルファンタジーXVI』レビュー:30代が魅了された大人のFF、その革新と原点回帰

かつてスーパーファミコンやプレステで『FF(ファイナルファンタジー)』に没頭した30代の皆さん、最新作はプレイしましたか?2023年に発売されたシリーズ16作目『ファイナルファンタジーXVI(以下FF16)』は、大人向けの重厚な物語とリアルタイムアクションバトルで、新たな境地に踏み込んだ作品です。発売前は「FFがついにアクションRPGになるの!?」と驚きもありましたが、プレイしてみれば30代の私もすっかり魅了されました。この記事では、FF黎明期からプレイしてきた筆者が、FF16のレビューと魅力を語ります。

ダークファンタジーの物語

ストーリー概要: 舞台はヴァリスゼアと呼ばれる大地。強大な召喚獣(エイドリン)を宿す「ドミナント」と呼ばれる人々が存在し、各国がその力を巡って争っています。主人公はロザリア公国の第一王子だったクライヴ・ロズフィールド。彼は弟ジョシュアに宿る召喚獣フェニックスの“盾”として育てられますが、悲劇的な出来事により全てを失い、復讐のために暗躍する人生を歩むことに…。物語は少年期、青年期、壮年期とクライヴの生き様を追い、やがて世界の存亡を賭けた戦いへと発展していきます。

30代に刺さる重厚さ: これまでのFFシリーズは比較的ティーン向けの明るさやロマンチックさがありましたが、FF16は大人向けのダークで血生臭いストーリーです。政治劇、陰謀、憎しみ、差別など、現実社会にも通ずるテーマが次々と描かれ、中世ヨーロッパ風のファンタジー世界と相まって「まるで海外ドラマのGame of Thronesみたい」と評する声も。私自身、ゲーム序盤でショッキングな事件が起きた際、「FFでここまでやるとは…」と衝撃を受けました。しかし、このシリアス路線が30代にはむしろ深く刺さります。子供の頃は理解しきれなかった複雑な人間模様や正義と悪の曖昧さに共感でき、物語に引き込まれる力が強いです。主人公クライヴも思慮深く感情の機微を丁寧に描かれており、彼が葛藤し成長していく様に、自分自身の人生を重ねて感じる部分もありました。

アクション戦闘と召喚獣バトル

フルアクションへの挑戦: FF16の戦闘は従来のコマンド式ではなく、完全リアルタイムのアクションです。開発にカプコンの「デビルメイクライ」スタッフが参加していることもあり、コンボや回避、スキル連携などまさにスタイリッシュアクションRPG。30代の私としては最初「付いていけるかな?」と不安もありましたが、アクション難度は選べるし、サポート装備で簡単操作にもできるので心配無用でした。むしろ、20代の頃に遊んだド派手なアクションゲームの興奮を思い出し、「まだまだ自分もイケるじゃん!」と手汗握りながらプレイ。巨大なボス敵を相手に、剣と魔法を駆使して戦う爽快感はコマンドバトルとはまた違った魅力があります。敵の大技をギリギリで回避して反撃を叩き込んだ時の快感は格別です。

召喚獣バトルの圧巻演出: FFといえば召喚獣。FF16ではドミナント同士の戦いとして、召喚獣同士が激突する超スケールのバトルが展開されます。これがまた圧巻で、画面いっぱいに展開する炎や雷、衝撃波!シヴァ vs タイタン、フェニックス vs イフリートなど、シリーズファン垂涎の組み合わせが実現します。30代の私は、FFIIIやFFVでドット絵だった召喚獣戦が、こんなにもリアルで激しい映像になる時代が来たのかと感無量でした。バトル自体はシネマティックな演出とQTE(一部ボタン入力イベント)が組み合わさった、ほぼ映画さながらの迫力。正直ゲームを遊んでいるというより、大作アニメを自分で動かしている感覚でしたね。ガルーダとの空中戦やバハムートとの天上決戦は、鳥肌立ちまくりで、何度でも見返したい名シーンでした。

シリーズ経験者ならではの楽しみ

クリスタルやジョブなど原点要素: FF16は新しい挑戦が多いですが、FFらしさもしっかり感じられます。例えばクリスタルによる魔法の恩恵といった設定、召喚獣=エイドリンの重要性、飛空艇やチョコボなどお馴染みの存在も登場。BGMにも過去FFのモチーフが散りばめられ、私はプレイ中に「このフレーズはもしやFFVの…!」などと発見してはニヤリとしました。主人公クライヴの技にも、過去シリーズのジョブ技(竜騎士のジャンプ、ナイトのかばう等)を彷彿とさせる要素があり、歴代FFを遊んできた30代としては「わかってるねぇ」と嬉しくなりました。遊び心と敬意をもってシリーズの伝統を継承しているのが伝わります。

高難度モードでやり込み: 仕事や家庭で忙しい30代に優しいのは、ストーリーだけなら50時間程度でクリアできるテンポの良さ。しかし、もっと遊びたい人にはクリア後の高難度モードやタイムアタックモードなど、やり込み要素もしっかり用意されています。私もノーマルクリア後「アルテマウェポン作成」や「討伐クエスト全制覇」に挑戦し、さらに難易度“ファイナルファンタジー”に挑み中です。学生時代は何十時間もFFに費やしましたが、今また同じように夢中になれるのは幸せですね。アクションが上達していく実感もあり、自己成長と重ねて楽しめます。

30代ゲーマーの総評

FF16は大胆な変革を遂げた一方で、私たちが愛したFFの魂をしっかり継いだ作品でした。深みのあるストーリーと人間ドラマ、壮大な音楽と映像、そしてゲームプレイの楽しさ、どれをとっても一級品です。「クリスタルの加護を捨てた世界」というキャッチコピー通り、新生したFFはより大人向けに進化しました。しかし、根底に流れるテーマ(友情、自己犠牲、希望の光など)はシリーズ通じて不変で、30代になった今だからこそより強く胸に響きました。

賛否はあれど、FFは常に挑戦を続けるシリーズ。FF16はその精神を体現し、私たちプレイヤーをまた新たな冒険へと誘ってくれました。長年のFFファンも、しばらく離れていた人も、ぜひヴァリスゼアの世界を体験してみてください。きっと少年少女だったあの頃の自分が、ゲームの向こうで待っています。「SeeD」とか「クリスタルの戦士」ではなくとも、30代になった今こそ紡げる物語がある——FF16はそう教えてくれました。