初音ミクからAIシンガーへ:バーチャルアーティスト最前線と30代が感じる未来

2007年、バーチャルシンガー「初音ミク」が誕生して以降、音楽とテクノロジーの融合はめざましい発展を遂げてきました。当時高校生・大学生だった30代の私たちは、ミクが歌う『千本桜』『メルト』などに熱狂し、新たな音楽表現の可能性に胸を躍らせました。それから16年、バーチャルアーティストはさらに進化し、AIシンガーやバーチャルヒューマンなど続々と登場しています。この記事では、その最前線を解説しつつ、30代が感じるこのムーブメントの魅力と未来展望を語ってみたいと思います。

初音ミクが切り拓いた世界

ボーカロイド文化の確立: 初音ミクはヤマハの音声合成技術「VOCALOID」を搭載したソフトウェアから生まれました。パソコン上でメロディと歌詞を入力すれば、初音ミクの声で歌が作れる――これは当時革命的でした。30代の皆さんもニコニコ動画でボカロPたちが発表する楽曲に触れ、「プロ顔負けの名曲が素人から!」と衝撃を受けたことでしょう。彼女を皮切りに鏡音リン・レン、巡音ルカなど人気ボーカロイドが次々登場し、一大音楽ジャンルが確立。2010年代にはライブイベント「マジカルミライ」で3Dホログラムのミクが舞台を駆け回る姿に感動し、「バーチャルでもこんなに人を熱狂させるんだ」と実感しましたね。

なぜ30代に響いたか: ちょうど我々30代は、思春期〜20代前半に初音ミク旋風に遭遇した世代です。新しいもの好きな世代気質もありましたし、ネット文化に抵抗がないデジタルネイティブ最初期として、自然と受け入れた面もあります。加えて、初音ミクという存在自体が未来への希望みたいにキラキラしていて、現実のアイドルとも違う透明感と無限の可能性を感じたのも魅力でした。「自分の考えた歌をキャラクターが歌ってくれる」というプロデューサー願望も刺激され、DTM(デスクトップミュージック)に挑戦した30代もいたのでは?私も拙いながら曲を作って投稿したことがありますが、ミクが一生懸命歌ってくれて感動したものです。そんな体験を与えてくれた初音ミクは、まさにバーチャルアーティスト文化の原点でした。

AIシンガーの台頭:技術の進化

AI歌声合成の進歩: 2020年代に入り、人工知能技術の発展で歌声合成も大きく進化しました。最近では「NEUTRINO」や「Synthesizer V」といったソフトが注目され、人間そっくりの歌声をAIで生成できます。歌唱データを学習させたAIモデルを使えば、好きな歌手の歌声を再現したり、感情表現豊かな歌唱が可能に。例えばVOCALOIDの後継とも言える「CeVIO AI」では、VOCALOIDでは難しかったビブラートなどのニュアンス表現が格段にリアルになりました。30代にとっては、「ここまで来たか!」と驚かざるを得ません。もう電子的な機械声とは言わせないクオリティです。最近では某有名歌手の歌声AIモデルが非公式に出回り、その歌手本人が反応するなんてこともニュースになっていましたね。夢と課題が混在していますが、技術トレンドとして目が離せません。

AIシンガーの誕生: 上記の技術により、新たな“中の人なし”バーチャルシンガーが誕生しています。例えば、「可不(KAFU)」というキャラクターは、AIにより実在歌手・flowerの声をモデル化しており、VOCALOIDとは一線を画すリアルな歌唱が可能です。またバーチャルYouTuber(VTuber)界からも歌って踊れるAIアイドルが登場。特に海外ではAIアイドル「Kizuna AI」の後継プロジェクトから生まれた「#kzn(キズナ)ちゃん」がAI歌声で注目されました。30代からすると、あのキズナアイがVTuber黎明期だったのが2016年頃、そこからVTuberもAI化していくのか…と感慨深いです。AIシンガーは今、ボカロP出身のクリエイターたちが積極的に活用して曲を発表しており、再びネット上で新曲ラッシュが起きています。久しぶりにニコ動やYouTubeで音楽漁りしている30代もいるのでは?

バーチャルヒューマンとリアルの融合

歌手以外のバーチャルアーティスト: バーチャルな「人」は歌手に限りません。3DCG技術やAIトーク技術により、バーチャルモデル、バーチャル俳優、バーチャルインフルエンサーなど多彩な「バーチャルヒューマン」が活躍しています。中国ではローカルテレビ局にバーチャルアナウンサーが登場しニュースを読んだり、韓国ではバーチャルインフルエンサー「Rozy(ロージー)」が広告モデルとして大人気です。日本でもNTTが開発したバーチャルヒューマン「徠(Lai)」が存在感を放っています。30代からすると、SFで見た未来が現実になっている気分ですね。TwitterやInstagramでフォローしているのが実はバーチャル人物だった、なんてことも日常に。私も最近まで海外のファッションモデルだと思っていたアカウントがバーチャルだったと知り驚きました。

リアルとの境界: バーチャルが高度化すると、リアルとの境界線が曖昧になってきます。例えば最近話題になったのが、AIで故人の声や姿を再現する試み。30代の我々が慕ったアーティストがバーチャルで蘇り、新曲を“発表”する日が来るかも…という期待と戸惑いがあります。また、人間の歌手とバーチャル歌手のコラボなんてことも増えてきました。初音ミクは既に多くの実在アーティストと共演していますし、アニメ映画の劇中アイドル(もちろん声優さん演技ですが)と現実のアイドルがコラボライブした例もあります。さらに最近は「TWIN PLANET」という吉本興業系の会社がバーチャルタレントのマネジメントに本腰を入れるなど、業界横断の動きも。30代の身としては、リアルもバーチャルも分け隔てなく楽しめる懐の深さを持ちたいところですね。なんとなく昔は「作り物に感情移入するなんて…」という偏見もありましたが、今やそんなこと言ってられない面白い世界が広がっています。

30代が感じるバーチャルアーティストの魅力と未来

創作意欲の刺激: 初音ミク登場以来、バーチャルアーティスト文化は「聴く専」だけでなく「自分も発信する側になれる」魅力がありました。楽曲制作に限らず、イラストを描いたりMVを作ったり、コスプレしたり…30代になり忙しくなった今も、彼らの存在は我々の創作意欲をくすぐります。最近AIの進化で音楽制作のハードルがまた下がったので、「もう一度曲作りしてみようかな」なんて思っている30代の同志もいるのでは? かくいう私も眠っていたDAW(音楽制作ソフト)を引っ張り出し、AIシンガーで昔作った曲をリメイクして遊んでいます。バーチャルアーティストはクリエイティブの扉を常に開き続けてくれる存在です。

未来への期待と課題: バーチャルとAIが紡ぐ音楽の未来は、期待と課題が入り混じっています。技術的にはさらにリアルで表現豊かなAIシンガーが登場し、人間と聴き分けがつかなくなるでしょう。そうなると、著作権や倫理の問題も出てきます。既に「AIが作詞作曲した曲を誰の作品とするか?」など議論されていますね。30代としては、新しいもの好きでもありますが根っこは人間くさい部分も大事にしたいので(笑)、人間とバーチャルが共栄できる形が理想だと思います。例えばライブでは生身のアーティストの歌唱にバーチャルキャラがコーラス参加、とか、AIが作曲して人間が歌詞をつけるコライト(共作)とか。そういう融合が一般化して、音楽そのものがもっと自由に、ボーダーレスになっていけば素敵です。

30代の役割?: 最後に、30代としてこの文化にどう関わるか。私は、黎明期を知る先輩ファンとして、新しい世代にこの面白さを伝えたり、一緒に盛り上がったりする橋渡し役になれたらいいなと思います。子供がいる方は、お子さんと初音ミクのライブ映像を観たり、AIお絵描きで遊んだりするのもいいですね。私も年下の同僚にミクの曲を薦めて「めっちゃいい曲!」と喜んでもらえたことがあります。テクノロジーは日進月歩だけど、音楽を愛する気持ちは世代共通。バーチャルアーティストはそれを繋ぐ存在でもあります。

まとめ

初音ミクから始まったバーチャルアーティストの歴史は、AIの力を得て新たなステージに突入しました。30代の私たちは、その進化をリアルタイムで見届けている貴重な世代です。驚きつつもワクワクするこの状況、きっと10年後20年後には「2020年代はこんなだったよ」と語る思い出になるでしょう。

リアルもバーチャルも垣根なく楽しんで、私たち自身も創造性を発揮しながら、音楽の未来を一緒に作っていけたら最高ですね。AIシンガーが歌う新曲を聴きながら、あの頃夢中になったミクの名曲を久々にプレイリストに加えてみる…そんな風に、過去と未来を行き来しながら音楽を楽しみたいと思います。バーチャルアーティストたちが生み出す次の感動に期待しつつ、自分もクリエイティブな心を忘れずにいたいですね。