あえて不便が新鮮!Z世代で広がるフィルムカメラブーム

はじめに

スマホで誰もが高画質な写真を撮れる時代に、あえてフィルムカメラを手にする若者が増えています。使い捨てカメラ「写ルンです」や父母世代のお下がりカメラを使って撮影を楽しむ様子がSNSでも話題です。実際、2020年代前半にはフィルムカメラや写ルンですがZ世代でブームとなり​、いまやカメラ店でもフィルムを買い求める10~20代が後を絶ちません​。筆者も友人に触発され、最近中古のフィルム一眼レフを手に入れたばかり。スマホにはない独特の体験にワクワクしています。

デジタル世代がフィルムに惹かれる理由

なぜデジタルネイティブのZ世代が、手間もお金もかかるフィルム写真に惹かれるのでしょうか?一つ目の理由は、写真の質感や偶然性です。フィルムで撮った写真は、ピントが甘かったり色がにじんだりといった不完全さがむしろ味になります。現代のカメラはどれも綺麗に撮れて当たり前ですが、「敢えて綺麗に撮れない感じが新鮮!」と若者たちは感じているようです。実際カメラ店では「どのカメラが一番うまく撮れませんか?」なんてユニークな質問も飛び出すとか​。失敗すら含めて一期一会の写真になるのがフィルムの醍醐味で、その予測不能なエモさにハマる人が続出しています。

二つ目は、時間をかける贅沢。撮ってすぐ見られるデジタルと違い、フィルムは現像するまで結果がわかりません。数日待ってやっと写真が手元に届くドキドキ感は、メールではなく手紙を待つような特別な高揚感があります。また1本のフィルムで撮れる枚数は限られているため、一枚一枚を大切にシャッターを切るようになります。こうしたスローなプロセス自体が、慌ただしい日常への心地よいブレーキとなっているのでしょう。

三つ目に、レトロな雰囲気への憧れがあります。フィルムカメラで撮った写真はどこか懐かしく、Instagramにアップしても「フィルム風加工アプリ?」と間違われるほど独特のムードがあります。昭和・平成の写真アルバムを見ているようなノスタルジックな色味は、デジタルネイティブにはかえって新鮮です。Z世代にとってフィルム写真は「昭和に戻る」のではなく“令和の新しい表現”なんだといいます​。おしゃれなインフルエンサーたちがフィルム写真を投稿している影響もあり、「なんだかオシャレ」という理由で始める人も少なくありません。

初めてのフィルム撮影体験:驚きと発見

筆者が初めてフィルムカメラを手にしたのは、昨年の夏でした。友人が持っていた古いコンパクトカメラで撮った写真を見せてもらい、その柔らかな色合いに心奪われたのです。さっそく祖父から借り受けた古いフィルムカメラ(露出計も壊れかけの年代物!)を持って、近所の公園へ撮影散歩に出かけました。

最初はスマホのようにプレビューもできず不安でしたが、逆に「ちゃんと撮れてるかな?」と想像しながらファインダーを覗く時間が新鮮でした。24枚撮りフィルムを1本撮り終えるのに、いつもなら数分で済むところを1時間以上かけたでしょうか。翌週、現像が仕上がって受け取った写真には驚きと感動が詰まっていました。ピントが合っていない写真も半分くらいありましたが、それもご愛嬌。思わず笑ってしまう失敗ショットも、色味が優しくてなんだか絵になるから不思議です。

特にお気に入りだったのは、夕暮れ時に撮った一枚。陽の光が漏れてフレアが入り、全体がオレンジがかったその写真は、デジタルではおそらく撮れない唯一無二の風合いでした。SNSにその写真をアップすると、「フィルムカメラで撮ったの?雰囲気すごくいいね!」と大好評。自分としては失敗気味かなと思った写真だったので意外でしたが、「完璧じゃない良さ」を共感してもらえた気がして嬉しかったです。

フィルム写真を始めるコツ

フィルムカメラに興味はあるけどハードルが高そう…という方も多いでしょう。そこで、これから始める方向けにいくつかコツを。

  • 使い捨てカメラから試す: 初心者にはまず「写ルンです」などの使い捨てカメラがおすすめ。現像に出すだけでOKなので手軽です。フィルム独特の色合いをまず体験してみましょう。
  • 中古カメラをゲット: 本格的に始めるなら中古のフィルムカメラを入手します。機械式のシンプルなカメラは故障しにくく、電池不要で動くモデルも多いです。カメラ店で状態の良いものを選んでもらうと安心です。
  • 現像はお店にお任せ: 撮り終わったフィルムは写真店に持ち込みます。現像と同時にデータ化(CDやダウンロード)してくれる店も多く、スマホで見たりSNSに投稿するのも簡単です。最近の若者は「ネガはいらないので捨ててください」とデータだけ受け取る人も多いとか​。
  • 焦らず楽しむ: デジタルと違い失敗もつきものです。ピンぼけや露出ミスも「味」と捉えて楽しんでみましょう。一度に撮り切らず何日もかけてゆっくり撮影するくらいの気持ちでいると、フィルムとの付き合いが心地よくなります。

まとめ:不完全だからこそ愛おしい

フィルムカメラブームは、便利さや効率ばかりを追い求めてきた私たちに不便の良さを教えてくれます。一枚の写真に込める想いや、仕上がりを待つ時間の高揚感、そして出来上がった写真の予想外の表情——そのどれもがデジタルにはない魅力です。

Z世代にとってフィルム写真は単なる懐古ではなく、新鮮な自己表現のツールとなっています。完璧じゃないからこそ愛おしい、そんな世界に飛び込んでみると、写真を撮る楽しさを改めて発見できるでしょう。スマホを置いてファインダーを覗けば、いつもの風景も少し違って見えるかもしれませんよ。時間と手間をかけて紡ぐ一枚——その尊さを教えてくれるフィルムカメラという相棒を、あなたも手にしてみてはいかがでしょうか。